神林 崇Takashi Kanbayashi

所属:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構

研究テーマ

実験医学

神経自己抗体の研究を通じて、中枢性過眠症と統合失調症の病態を解明する

01 研究概要

オレキシンが発見されてから既に20年経ちますが、今でも睡眠覚醒障害では唯一の生化学的な指標であり、それ以外では旧来の睡眠ポリグラフ検査と臨床症状のみにより診断がなされています。オレキシンはナルコレプシーにて低値となりますので、確定診断のために2000年から測定を続けて、約3000検体を測って来ました。継続的に測定している世界で3カ所のうちの一つの拠点となっています。視床下部の病変による症候性の過眠症にてもオレキシンは有効な指標です。アクアポリン4 (AQP4) 抗体により視床下部が障害される症候性のナルコレプシーを、自己免疫機序が関与する最初の睡眠覚醒障害として報告しました。視床下部に病変がある場合が多いですが、それ以外でも遺伝性疾患や神経変性疾患でもオレキシンが低下して症候性のナルコレプシーが起こることを報告しています。

AQP4抗体と同様に細胞膜表面に作用するNMDA受容体抗体は、統合失調症様の症状を来すNMDA受容体脳炎を引き起こします。統合失調症は原因不明の疾患ですが、自己免疫機序により発症する場合が数%はあると考えて、検討を続けています。  臨床の現場にては、中高生の朝の起床困難は頻度が高く大きな問題であり、不登校の誘因にもなります。抗精神病薬であるアリピプラゾールの微量内服で朝の覚醒と夜の早めの入眠が促せることを明らかにして、治療の一助としています。


【医療者の方へ】

当研究室では、意識に減損のある方の脳脊髄液中のオレキシン等の測定研究を行っております。臨床診断を行うことはできませんが、検体を送っていただければ無料で測定いたしますので、ご連絡をお待ちしております。詳細は、以下をご覧ください。

※患者様個人からの直接のお問合わせには応じかねますので、ご了承ください。

脳脊髄液中の睡眠・覚醒関連物質であるオレキシン等の測定研究


【診察等を希望される方へ】

IIISのWebサイトをご覧いただきありがとうございます。

筑波大学では、研究のみで臨床には従事しておりませんが、茨城県立こころの医療センターで睡眠・覚醒障害外来を担当しております。診察を希望される方は、下記にお問い合わせください。


茨城県立こころの医療センター

(代表)0296-77-1151

http://www.pref.ibaraki.jp/byoin/mc-kokoro/cont/index.html

※初診・再診とも、外来診察は予約制となっております。睡眠・覚醒障害外来の希望とお伝えください。


また、すでに他院で起立性調節障害や睡眠相後退症候群で治療中の方は、下記資料をご一読いただき、主治医の先生にご相談いただいても良いかと思います。

「朝に起きられない中高生『若年性起床困難症』への対処法:起立性調節障害と睡眠相後退症候群の異同について」