櫻井 武Takeshi Sakurai

所属:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 副機構長

研究テーマ

基礎生物学

「神経ペプチドの生理的役割、とくに覚醒や情動に関わる機能の解明」「新規生理活性ペプチドの検索」「睡眠・覚醒制御システムの機能的・構造的解明」

01 研究概要

脳は神経細胞=ニューロンという素子をつかって膨大な情報を処理する装置です。ニューロンは電気信号をつかって情報を伝導し、ニューロンとニューロンの情報のやりとりにはさまざまな生理活性物質が介在しています。情報伝達にはシナプスを介する情報のやりとりと、シナプスを介さないやりとりが存在しますが、その両者ともなんらかの情報伝達物質によって介在されています。私たちは脳内物質のうち、とくに神経ペプチドに興味をもって研究を進めています。私たちは新規のさまざまな作用をもつ神経ペプチドを見出し、それらを詳細に調べることにより、これまでに知られていなかった脳の新しい機能や作動メカニズムの解明することを目指しています。神経ペプチドは進化的に比較的古いシステムで、摂食行動や睡眠、感情などに深く関連しています。これらの機能の解明は学問的な価値をもっていることはもちろんですが、さまざまな疾患の解決にも結びつきます。

研究室サイト
櫻井/平野研究室メンバー

櫻井/平野研究室メンバー

02 主な論文

Emi Hasegawa, Ai Miyasaka, Katsuyasu Sakurai, Yoan Cherasse, Yulong Li, Takeshi Sakurai. Rapid eye movement sleep is initiated by basolateral amygdala dopamine signaling in mice. Science. 2022 Mar 4;375(6584):994-1000.2022.

Takahashi TM, Sunagawa GA, Soya S, Abe M, Sakurai K, Ishikawa K, Yanagisawa M, Hama H, Hasegawa E, Miyawaki A, Sakimura K, Takahashi M, Sakurai T. A discrete neuronal circuit induces a hibernation-like state in rodents. Nature. 2020 Jul;583(7814):109-114.2020.

Sakurai T, et al. Orexins and orexin receptors: A family of hypothalamic neuropeptides and G protein-coupled receptors that regulate feeding behavior. Cell 92:573-585, 1998 (オレキシンの同定に関する原著論文:引用数5976回)

        

Sakurai T, Yanagisawa M, Takuwa Y, Miyazaki H, Kimura S, Goto K, Masaki T. Cloning of a cDNA encoding a non-isopetide-selective subtype of the endothelin receptor. Nature 48:732-735, 1990 (大学院生の頃行ったエンドセリン受容体に関する論文:引用数2964回)

03 経歴・受賞歴

経歴

1964年 東京都生まれ
1993年 筑波大学大学院医学研究科博士課程卒業
1993年 - 1993年 日本学術振興会特別研究員 研究員
1993年 - 1999年 筑波大学基礎医学系 講師
1999年 - 2004年 筑波大学基礎医学系 助教授
2004年 - 2007年 筑波大学大学院人間総合科学研究科 助教授
2007年 - 2007年 筑波大学大学院人間総合科学研究科 准教授
2008年 - 2016年 金沢大学 医薬保健学総合研究科 / 教授
2016年 - 現在 筑波大学 医学医療系 / 教授

受賞歴

第11回つくば奨励賞/第14回安藤百福賞大賞/第65回中日文化賞/平成25年度 文部科学省 科学技術賞/第2回塩野賞/第32回つくば賞

もっと知りたい!Q&A もっと知りたい!Q&A

なぜ研究を志したのですか?

なんとなく研究をはじめて、なんとなく続けていた

筑波大学の医学部5年生の頃、当時大学院生でエンドセリンを発見したばかりの柳沢先生が「これからがエンドセリン研究の面白いところだから一緒に研究をやらないか?」と声をかけてくれたのです。医師になりたいという気持ちはありましたが、研究にも興味があったので、「とりあえずやってみて駄目だったら医師の道に戻ろう」と期間限定のつもりで研究の世界に入りました。ただ、どうせやるなら面白い成果を残したかったので寝る間も惜しんで研究をしていたら、エンドセリン受容体の分子構造を明らかにすることができました。大学院卒業後に講師のポジションを獲得でき、そのままなんとなく続けていたら今になっていました。医師になりたい気持ちはいつの間にか消えていました。

研究室の「ウリ」はなんですか?

フリーダム

研究者や大学院生たちには、自由な発想で、自らのインスピレーションにしたがって研究を行ってもらいたいので、できるだけ制限をもうけないようにしています。彼らには私よりも優れている面がたくさんあり、あれこれ指示をするよりは、個性を活かして研究を行ったほうがより良いアウトプットにつながると思うからです。自主性にまかせているので「放牧スタイル」と呼ばれることもありますね(笑)。もちろん、完全に放置ではなくて、必要なときにはサポートをしたり軌道修正もします。その場合も、本人の自主性を阻害することはしないようにしています。また、研究者と学生で特に区別はしていないこと、ワイワイガヤガヤとよくお喋りすることもラボの特徴と言えるかもしれません。

最近ハマっているものは?

モータースポーツ・写真・オーディオ

大学生のころからサーキットに行ってレーシングカートやフォーミュラーカーを運転していました。直線で250~260kmもの速度をだしたり、自分の体重ほどのGがかかるようなスピードでカーブを曲がったり。ジムカーナやレースにも出場していました。研究室が金沢大学に移転してからは、近くにサーキットがなかったので、カメラで写真を撮るようになっていましたね。 機械などを扱うことが好きなので、モーターカーもカメラも同じような意味で好きでしたね。音楽も好きですが、これもオーディオ装置と関係があります。