柳沢 正史Masashi Yanagisawa

所属:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 機構長

研究テーマ

基礎生物学

睡眠を巡るミステリーの解明~健康睡眠を導く新たな介入法開発を目指して~

01 研究概要

睡眠というありふれた現象は謎に満ちていて、なぜ我々は眠らなければならないのか、そしてそもそも「睡眠」の実体とは何なのか、まったく明らかになっていません。オレキシンという鍵によってナルコレプシーという睡眠障害の扉を開いた先には、睡眠・覚醒を巡る大きなブラックボックスが待っていました。このブラックボックスをこじ開けるため、柳沢/船戸研究室ではフォワード・ジェネティックス、in vivo カルシウムイメージング、多細胞同時記録法、スライスパッチクランプ法等を用いた基礎的研究と、オレキシン受容体を標的とした創薬研究を行っています。最近、フォワード・ジェネティクス研究の進展により睡眠覚醒制御に重要な役割を果たす3つ以上の遺伝子を同定することに成功しました。睡眠の謎を解き、多くの人に還元できる成果が挙げられるよう、日夜実験に取り組んでいます。

研究室サイト
柳沢・船戸研究室メンバー

柳沢・船戸研究室メンバー

02 主な論文

Kanako Iwasaki, Tomoyuki Fujiyama, Shinya Nakata, Minjeong Park, Chika Miyoshi, Noriko Hotta-Hirashima, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Fumihiro Sugiyama, Seiya Mizuno, Manabe Abe, Kenji Sakimura, Satoru Takahashi, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa*. Induction of mutant Sik3 Sleepy allele in neurons in late infancy increases sleep need. Journal of Neuroscience, 41, 2733-2746, 2021

Zhiqiang Wang, Jing Ma, Chika Miyoshi, Yuxin Li, Makito Sato, Yukino Ogawa, Tingting Lou, Chengyuan Ma, Xue Gao, Chiyu Lee, Tomoyuki Fujiyama, Xiaojie Yang, Shuang Zhou, Noriko Hotta-Hirashima, Daniela Klewe-Nebenius, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Satomi Kanno, Liqin Cao, Satoru Takahashi, Junmin Peng, Yonghao Yu, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa*, Qinghua Liu*. Quantitative phosphoproteomic analysis of the molecular substrates of sleep need. Nature, 558, 435-439, 2018

Hiromasa Funato*, Chika Miyoshi, Tomoyuki Fujiyama, Takeshi Kanda, Makito Sato, Zhiqiang Wang, Jing Ma, Shin Nakane, Jun Tomita, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Noriko Hotta-Hirashima, Satomi Kanno, Haruna Komiya, Fuyuki Asano, Takato Honda, Staci J. Kim, Kanako Harano, Hiroki Muramoto, Toshiya Yonezawa, Seiya Mizuno, Shinichi Miyazaki, Linzi Connor, Vivek Kumar, Ikuo Miura, Tomohiro Suzuki, Atsushi Watanabe, Manabu Abe, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Kenji Sakimura, Yu Hayashi, Qinghua Liu, Kazuhiko Kume, Shigeharu Wakana, Joseph S Takahashi, Masashi Yanagisawa*. Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice. Nature, 539, 378-383, 2016

03 経歴・受賞歴

受賞

2003年 米国科学アカデミー正会員に選出
2016年 紫綬褒章
2017年 エルウィン・フォン・ベルツ賞1等(ベーリンガーインゲルハイム社)
2018年 朝日賞(朝日新聞文化財団)
2018年 慶應医学賞(慶應義塾医学振興基金)
2019年 高峰記念第一三共賞(第一三共生命科学研究振興財団)
2019年 文化功労者
2022年 時実利彦記念賞(日本神経科学学会)
2022年 2023ブレークスルー賞 生命科学部門

経歴

筑波大学医学専門学群・大学院医学研究科博士課程修了。1991年に31歳で渡米、テキサス大学サウスウェスタン医学センター(准教授、1996年より教授)とハワードヒューズ医学研究所(准研究員、1996年より研究員)にて、2014年まで24年にわたって研究室を主宰した。2010年に内閣府 最先端研究開発支援プログラム(FIRST)に採択され、筑波大学に研究室を開設。 2012年より文部科学省世界トップレベル研究拠点プログラム 国際統合睡眠医科学 研究機構(WPI-IIIS)機構長・教授。 2021年よりムーンショット型研究開発事業のプロジェクトマネージャーを務める。

もっと知りたい!Q&A もっと知りたい!Q&A

なぜ研究を志したのですか?

今日の患者ではなく、明後日の患者を治したいから

母によると、僕は小学校の1年生のときから将来研究者になりたいと言っていたそうです。当時から変わった子で、近所のきれいな小川に行って、水がどのように流れ、渦をまくのか1時間ぐらいじっと観察していました。今思えば危ないことしていたと思いますが、身の回りにあるいろんなことに興味を持っていました。自然科学が好きだという証拠ですかね。 その後、時は進み、大学では医学部に進学したのですが、卒業のときに生涯で一番大きな決断をしました。「今日の患者ではなく、明後日の患者を治したい」と考え、目の前の患者さんを治す臨床医としての訓練をうけず、研究者として基礎研究に専念することを選んだのです。そこから研究の道にまっしぐらですね。

研究室の「ウリ」はなんですか?

自由であること

研究者は「自由」であることが大切であると考えています。だからこそ、誰かに強いられることなく、研究者自身が本当に面白いと思う研究を追求できるような環境づくりを目指しています。なので、学生や研究者の自主性をとても大事にしつつも困った時にはいつでも相談に来られるように、アメリカの多くの教授が実践しているオープンドアポリシーを取り入れています。オフィスのドアが開いている時はいつでも僕に相談に来ていいよ、ということですね。また、主に学生を集めて原著論文の抄読会+夕食会をすることもあり、そこでは研究の話からなんでもない会話まで、いろいろなことを話す場を作り、彼らが自由に、そして楽しく過ごせるように心がけています。

最近ハマっているものは?

クラシック音楽を聴くこと、フルート演奏をすること

小学生のときにピアノを習っていたのですが、真面目にやっていなかったから演奏の腕は全く上がらず。でも教室の先生がすごい人で、小学生にもわかるように和声など音楽の基礎を教えてくれたのです。後にわかったことですが、その先生はピアニストの海老彰子さんのお母さんだったのです! 中学校に進学すると、音大卒でもないし楽器演奏もろくにできないけれどクラシックオタクの音楽の先生に出会いました。彼は自前のステレオを持ってきて授業でひたすらクラシックを流し、僕たちは総譜を追いかけながらその音楽を聞いていました。一般的な授業のように歌の上手いとか下手とかがなく、理論的に音楽を学べたので僕にとっては楽しかったですね。そこからずっとクラシック音楽が好きで、フルート演奏もします。