01 研究概要

 私たちは一生の約3分の1を眠って過ごします。しかしなぜ睡眠が必要なのか、なぜ私たちは眠らずにいられないのかは明らかではありません。生理機能の理解だけでなく、良質な社会生活を目指すという意味でも、睡眠の必要性や制御に関する研究は重要と言えます。

 我々は最近、報酬系による睡眠覚醒メカニズムを調べる過程で、睡眠量が極端に少ないマウスを偶然創り出しました。驚いたことに、このマウスでは眠気マーカーの増大が見られません。つまり、過度な眠気を呈さずに少ない睡眠量で活動可能な、いわゆるショートスリーパーのようなマウスと言えます。我々は、このマウスを含む複数の“短眠”モデルを用いて、短眠が生体に与える影響や、短眠が作られる神経メカニズムを研究し、睡眠の必要性や制御メカニズムの理解に迫ります。

研究室サイト

02 主な論文

Honda T, Takata Y, Cherasse Y, Mizuno S, Sugiyama F, Takahashi S, Funato H, Yanagisawa M, Lazarus M, Oishi Y. Ablation of Ventral Midbrain/Pons GABA Neurons Induces Mania-like Behaviors with Altered Sleep Homeostasis and Dopamine D2R-mediated Sleep Reduction. iScience, 23(6):101240, 2020

Takata Y, Oishi Y*, Zhou XZ, Hasegawa E, Takahashi K, Cherasse Y, Sakurai T, Lazarus M*. Sleep and Wakefulness are controlled by ventral medial midbrain/pons GABAergic neurons in mice. J Neurosci, 38(47):10080-10092, 2018 (*corresponding authors)

Oishi Y, Xu Q, Wang L, Zhang BJ, Takahashi K, Takata Y, Luo YJ, Cherasse Y, Schiffmann SN, de Kerchove d’Exaerde A, Urade Y, Qu WM, Huang ZL, Lazarus M. Slow-wave sleep is controlled by a subset of nucleus accumbens core neurons in mice. Nat Commun, 8(1):734, 2017

03 経歴・受賞歴

経歴

2009 大阪大学大学院医学系研究科 修了(医学博士)
2009-2010 大阪バイオサイエンス研究所 博士研究員
2010-2012 日本学術振興会 海外特別研究員
2010-2013 米国ハーバード大学
ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター 研究員
2013-2017 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 研究員
2017-2023 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 助教
2018-現在 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究者
2023-現在 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授

受賞歴

2018年 日本睡眠学会 研究奨励賞(非臨床系論文)
2018年 筑波大学 若手教員奨励賞

もっと知りたい!Q&A もっと知りたい!Q&A

なぜ研究を志したのですか?

『利己的な遺伝子』がきっかけ

大学生の頃、ダーウィンの進化論を遺伝子の観点から一般向けに書いたリチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んだことがきっかけでした。自己複製物の自然淘汰という単純な原理で、多様な生物界をうまく説明するストーリーに、生物学の奥深さを感じたことを覚えています。

PIとしての仕事をする上で心がけていることは?

セレンディピティを大事にする

最近ハマっているものは?

スキー