01 研究概要
脳波測定、光遺伝学、化学遺伝学、in-vivoイメージングなど最先端の手法を用いながら、睡眠覚醒を制御する細胞およびシナプス基盤に関する研究を行っています。その一例が、腹側被蓋領野および側坐核を含む中脳辺緑系によって睡眠覚醒が制御されるメカニズムの解析です。中脳辺緑系はモチベーションや認知行動に関わっており、動物では警戒の度合いによって気持ちや認知行動が変化します。また、睡眠不足によって、ジャンクフードなど不健康な食物の摂取量がどのように変化するかも調べています。最近、レム睡眠が減少するとショ糖や脂肪をより食べたくなる傾向があることを発見しました。また、前頭前皮質の神経活動を抑制すると、レム睡眠が減少してもショ糖消費量が増加しなかったことから、睡眠不足のとき甘いものが欲しくなる行動には前頭前皮質が関与していることを示しました。
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02 主な論文
Oishi Y, Xu Q, Wang L, Zhang BJ, Takahashi K, Takata Y, Luo YJ, Cherasse Y, Schiffmann SN, de Kerchove d’Exaerde A, Urade Y, Qu WM, Huang ZL, Lazarus M. Slow-wave sleep is controlled by a subset of nucleus accumbens core neurons in mice. Nat Commun, 8(1):734, 2017
McEown K, Takata Y, Cherasse Y, Nagata N, Aritake K, Lazarus M. Chemogenetic inhibition of the medial prefrontal cortex reverses the effects of REM sleep loss on sucrose consumption. eLife, 5:e20269, 2016. Featured in ScienceDaily, Yahoo! Japan News (279 comments), Asahi Newspaper and NHK News.
Lazarus M, Shen HY, Cherasse Y, Qu WM, Huang ZL, Bass C, Winsky-Sommerer R, Semba K, Fredholm B, Boison D, Hayaishi O, Urade Y, Chen JF. Arousal Effect of Caffeine Depends on Adenosine A2A Receptors in the Shell of the Nucleus Accumbens. Journal of Neuroscience, 31:10067-10075, 2011.
03 経歴
1969年 | ドイツのバイエルン州のエルレンバッハ・アム・マイン市で生まれる |
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1994年 | ヴュルツブルク大学(ドイツ)認定食品科学者 |
1998年 | ヴュルツブルク大学(ドイツ)主席で博士号取得 |
1999年 | 大阪バイオサイエンス研究所 武田科学振興財団研究員 |
2000年 | 大阪バイオサイエンス研究所 Alexander von Humboldt Fellowship |
2002年 | ハーバード医科大学院(アメリカ)NIH Research Fellow |
2005年 | ハーバード医科大学院(アメリカ)講師 |
2007年 | 大阪バイオサイエンス研究所 シニア研究員 |
2013年 | 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究員(准教授) |
2022年 | 筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究員(教授) |
なぜ研究を志したのですか?
論理的に考えることが好きだから
私は論理的に考えることが好きで小さい頃から数学や科学技術に興味を持っており、将来はエンジニアか科学者になりたいと思っていました。10歳のころには、ギリシャ語の "gymnasion(古代ギリシャの運動や教育の場)"に由来するGymnasium"というドイツの学校に入りました。"Gymnasium"は日本でいうところの、大学受験を目指す中高一貫教育の学校です。ノーベル賞化学賞受賞者ヘルマン・シュタウディンガーさんにちなんで名前がつけられており、大学で科学技術を学ぶために準備をするような場でした。
研究室の「ウリ」はなんですか?
国際的なラボ
私たちのラボは、ヨーロッパやアジア諸国出身の研究者や学生が集まる国際的なラボです。 さまざまな背景と文化を持った人たちが集まることで、より批判的に物事を見ることができますし、なによりも国際的な競争力が高まります。私は、多様性がさまざまなアイデアを生みだし、創造的に物事を解決することにつながると信じています。 もっと現実的なことを言えば、神経生物学の研究者が「賃金の高い仕事への切符」を得るには、英語で読み書きする能力が不可欠だと考えています。 かのガリレオ・ガリレイは「人に何かを教えることはできず、自分の中でそれを見つけるのを手助けすることしかできない」と言いました。科学への情熱、問題解決能力、また新たなイノベーションの推進力を育むのが、私の役割だと思っています。
最近ハマっているものは?
料理と植物栽培
IIISの生活はとても忙しいです。 私は平日と土曜日には平均して11-12時間ほど働いていますが、日曜日は家族と一緒に時間を過ごします。 日曜日には、しばしばドイツ料理を作ります。料理をすることと科学実験は同じようなスキルと思考力が求められます。 植物の栽培にも興味があり、家のバルコニー(または私のオフィス)を植物でいっぱいにしていきたいと考えています。長年、日本の伝統的なアート作品である盆栽に興味を持っていたのですが、最近ついに盆栽を習おうと心に決めました。