01 研究概要
マウスを用いた睡眠のフォワード・ジェネティクス研究によって新規睡眠制御分子を同定し、同定した分子群にもとづいて睡眠制御の分子機構を明らかにすることが、研究の大きな枠組みとなっています。われわれが最近見出した睡眠制御分子としては、睡眠量の制御に関わるリン酸化酵素SIK3や、レム睡眠エピソードの持続や終止に関わるイオンチャネルNALCNがあります。 多くの場合、重要な分子は様々なことに関与しています。これらの分子についても、睡眠覚醒制御だけではなく、記憶、不安・うつ、社会行動、本能行動、エネルギー代謝、老化の面から研究を進めています。
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02 主な論文
Fuyuki Asano, Staci J Kim, Tomoyuki Fujiyama, Chika Miyoshi, Noriko Hotta-Hirashima, Nodoka Asama, Kanako Iwasaki, Miyo Kakizaki, Seiya Mizuno, Michihiro Mieda, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Shoi Shi, Arisa Hirano, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa*. SIK3-HDAC4 in the suprachiasmatic nucleus regulates the timing of arousal at the dark onset and circadian period in mice. Proc Natl Acad Sci USA, 120, e2218209120, 2023
Staci J Kim, Noriko Hotta-Hirashima, Fuyuki Asano, Tomoyuki Kitazono, Kanako Iwasaki, Shinya Nakata, Haruna Komiya, Nodoka Asama, Taeko Matsuoka, Tomoyuki Fujiyama, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Satomi Kanno, Jinhwan Choi, Deependra Kumar, Takumi Tsukamoto, Asmaa Elhosainy, Seiya Mizuno, Shinichi Miyazaki, Yousuke Tsuneoka, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Yu Hayashi, Masafumi Muratani, Qinghua Liu, Chika Miyoshi, Masashi Yanagisawa, Hiromasa Funato. Kinase signalling in excitatory neurons regulates sleep quantity and depth. Nature, 612, 512-518, 2022
Rui Zhou, Guodong Wang, Qi Li, Fanxi Meng, Can Liu, Rui Gan, Dapeng Ju, Meimei Liao, Junjie Xu, Di Sang, Xue Gao, Shuang Zhou, Kejia Wu, Quanzhi Sun, Ying Guo, Chongyang Wu, Zhiyu Chen, Lin Chen, Bihan Shi, Haiyan Wang, Xia Wang, Huaiye Li, Tao Cai, Bin Li, Fengchao Wang, Hiromasa Funato, Masashi Yanagisawa, Eric Erquan Zhang, Qinghua Liu. A signalling pathway for transcriptional regulation of sleep amount in mice. Nature, 612, 519-527, 2022
Chika Miyoshi, Staci J. Kim, Takahiro Ezaki, Aya Ikkyu, Noriko Hotta-Hirashima, Satomi Kanno, Miyo Kakizaki, Mana Yamada, Shigeharu Wakana, Masashi Yanagisawa*, Hiromasa Funato*. Methodology and theoretical basis of forward genetic screening for sleep/wakefulness in mice. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 116, 16062-16067, 2019 (* corresponding authors)
Zhiqiang Wang, Jing Ma, Chika Miyoshi, Yuxin Li, Makito Sato, Yukino Ogawa, Tingting Lou, Chengyuan Ma, Xue Gao, Chiyu Lee, Tomoyuki Fujiyama, Xiaojie Yang, Shuang Zhou, Noriko Hotta-Hirashima, Daniela Klewe-Nebenius, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Satomi Kanno, Liqin Cao, Satoru Takahashi, Junmin Peng, Yonghao Yu, Hiromasa Funato*, Masashi Yanagisawa*, Qinghua Liu*. Quantitative phosphoproteomic analysis of the molecular substrates of sleep need. Nature, 558, 435-439, 2018
Hiromasa Funato*, Chika Miyoshi, Tomoyuki Fujiyama, Takeshi Kanda, Makito Sato, Zhiqiang Wang, Jing Ma, Shin Nakane, Jun Tomita, Aya Ikkyu, Miyo Kakizaki, Noriko Hotta-Hirashima, Satomi Kanno, Haruna Komiya, Fuyuki Asano, Takato Honda, Staci J. Kim, Kanako Harano, Hiroki Muramoto, Toshiya Yonezawa, Seiya Mizuno, Shinichi Miyazaki, Linzi Connor, Vivek Kumar, Ikuo Miura, Tomohiro Suzuki, Atsushi Watanabe, Manabu Abe, Fumihiro Sugiyama, Satoru Takahashi, Kenji Sakimura, Yu Hayashi, Qinghua Liu, Kazuhiko Kume, Shigeharu Wakana, Joseph S Takahashi, Masashi Yanagisawa*. Forward-genetics analysis of sleep in randomly mutagenized mice. Nature, 539, 378-383, 2016
03 経歴
1994年 | 東京医科歯科大学医学部医学科卒業 |
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1995年 | 東京大学医学部脳研究施設脳病理部門(井原康夫教授) 大学院特別研究学生 |
1998年 | 東京医科歯科大学大学院医学系研究科修了 学位取得 |
1998年 | 日本学術振興会特別研究員(PD) |
2001年 | 東京大学医学部附属病院精神神経科医員 |
2003年 | 山口大学医学部高次神経科学(精神神経科)助手 |
2005年 | テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター 博士研究員 |
2009年 | 東邦大学医学部医学科解剖学講座 講師 |
2010年 | 筑波大学分子行動科学研究コア 客員准教授 |
2011年 | 東邦大学医学部医学科解剖学講座 准教授 |
2013年 | 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 客員教授(WPI-IIIS) |
2018年 | 東邦大学医学部医学科解剖学講座 教授 |
受賞歴
2017年 | エルウィン・フォン・ベルツ賞1等(ベーリンガーインゲルハイム社) |
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なぜ研究を志したのですか?
わからないことを、人より早く知りたいから
小学生の頃に、大航海時代の本を読んで未知なる世界を探索することに心を惹かれました。今の時代なので宇宙飛行士になりたいと思いましたが、宇宙飛行士になるルートがよくわからなかったので、目標をきりかえました。その後、精神科医になろうと医学部に入って、気がついたら謎だらけの睡眠の世界に足を踏みいれてました。フィールドは違いますが、わからないことをいち早く知りたいという思う心は、今も昔も一緒なのかもしれません。
研究のターニングポイントとなったのはいつですか?
転機は3つありました
一つ目は、進学した大学院に興味を持てる研究テーマがなかったので、東大の井原康夫先生のところに押しかけたこと。二つ目は、留学先を探していた時に、実験医学に出ていたテキサス大学柳沢研究室のポスドク募集に応募したこと。三つ目は、ランダム突然変異マウスのスクリーニングを始めたばかりでアーティファクトがひどく変な睡眠データばかりだった頃、一回の測定中に多数の睡眠過多マウスが出てきて、またアーティファクトかと思ったものの、全部次世代作製にまわしたこと。半年後、これらが次々に遺伝性を示していき、Sleepy家系の樹立にいたりました。 何が幸いするかはわかりませんね。
研究室の「ウリ」はなんですか?
研究内容のオリジナリティ
さまざまな「ウリ」がありますが、、現時点で胸を張って言えることは、自分たちが見つけたものをさらに自分たちが深堀りしていける研究内容のオリジナリティです。世界中のどこの研究室も追いついていないうちに、さらに新しい研究にとりかかれるので、いろんな検討をし、たくさん失敗することができますし、そのなかで成功することもできます。競争は厳しいので、そのような状況でいられるのはほんの短い期間かもしれませんが。 ちなみに、テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンターには、Brown/Goldstein labなど2人の主任研究者が同じ研究室に所属し非常にアクティブに研究を行っているラボがあり、「柳沢・船戸研究室」はそれにならっています。