平野 有沙Arisa Hirano

所属:筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構

研究テーマ

基礎生物学

分子レベルから行動レベルまで、睡眠現象を理解する

01 研究概要

地球上の生物は地球の自転周期にあわせて生活しており、多くの生命現象は約1日周期のリズム(概日リズム)を示します。我々の睡眠・覚醒リズムもそのひとつであり、概日時計と呼ばれる体内の時計システムによって制御されます。24時間型社会といわれる現代社会では、体内時計の乱れが引き起こす概日リズム障害が問題となっていますが、睡眠障害をはじめメタボリックシンドロームや情動障害との強い連関が報告されています。我々はこれまで、ヒトにおいて睡眠のタイミングが変化する(例えば、極端な朝型にシフトする)時計遺伝子のバリアントを複数同定し、時計遺伝子がどのように時を刻み睡眠のタイミングを決定するのかを明らかにしてきました。このように、概日時計が睡眠覚醒のタイミングを決定していることは疑いようがない事実ですが、概日時計の中枢(視交叉上核, SCN)からどの神経回路を通り、どのような情報が伝達されて生理リズムが制御されているのかという出力経路にはいまだに謎が多く残されています。現在の神経科学では、神経細胞を特異的に遺伝子操作することで、神経の活動をモニターしたり、特定の回路を活性化・抑制することが可能となっています。我々は、これらの手法を駆使して時計細胞からの時刻情報伝達メカニズム(出力系)を明らかにします。一方、概日時計が時を刻むメカニズム(発振系)、外界環境に同調して時刻合わせをするメカニズム(入力系)にも興味を持っています。出力系とあわせた概日時計の3要素を統合的に理解し、睡眠覚醒リズムを生み出す制御メカニズムの全貌に迫ります。


02 主な論文

Hirano A, Hsu PK, Zhang L, Xing L, McMahon T, Yamazaki M, Ptáček LJ, Fu YH. “DEC2 modulates orexin expression and regulates sleep” Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2018, 115(13)3434-3439

Hirano A, Brass D, Fu YH, Ptáček LJ. “FAD Regulates CRYPTOCHROME Protein Stability and Circadian Clock in Mice” Cell Reports. 2017, 19(2)255-266

Hirano A, Fu YH, Ptáček LJ . “The intricate dance of post-translational modifications in the rhythm of life” Nature structural & molecular biology. 2016, 23(12)1053-1060

Hirano A, Yumimoto K, Tsunematsu R, Matsumoto M, Oyama M, Kozuka-Hata H, Nakagawa T, Lanjakornsiripan D, Nakayama KI, Fukada Y. “FBXL21 regulates oscillation of the circadian clock through ubiquitination and stabilization of cryptochromes” Cell. 2013, 152(5)1106-1118

03 経歴・受賞歴

経歴

  
2013年3月 博士(理学)(東京大学)
2013年4月-2014年3月 東京大学大学院理学研究科 特任助教
2014年4月-2016年3月 日本学術振興会 海外特別研究員
2014年4月-2017年3月 カリフォルニア大学サンフランシスコ校 博士研究員
2017年4月-2019年3月 筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 助教
2019年4月-現在 筑波大学医学医療系 助教/筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究員

受賞歴

     
2012 Society for Research on Biological Rhythm Trainee Research Awards (The 13th Biennial Meeting Society for Research on Biological Rhythm Conference)
2013 東京大学 東京大学総長賞
2013 東京大学大学院理学系研究科 研究奨励賞
2014 井上科学振興財団 第30回井上研究奨励賞
2018 井上科学振興財団 井上リサーチアウォード

もっと知りたい!Q&A もっと知りたい!Q&A

なぜ研究を志したのですか?


よくテレビ番組などで、アフリカのサバンナでチーターを追いかけている生態学者とかイルカを追いかけている海洋学者が出てきますね。小さい頃はあの人たちを見て、自分の好きな動物を研究してお金もらえるなんていいなぁと思っていました。だいたいそういう人たちはとても楽しそうに見えますし、身近な人に研究者がいなかったので学者の現実がよくわかっていませんでした。分子生物学をやろうと思ったのはもう少し後で、たった一塩基のDNA配列の違いが個体の形態や行動を大きく変えてしまうということに興味を持ったからです。概日時計という研究分野はまさに遺伝子変異による行動の変化が顕著に現れる魅力的な研究分野でした。学部の卒業研究からずっと体内時計のメカニズムの解明に取り組んでいます。

研究室の「ウリ」はなんですか?


2019年にPIとして研究を立ち上げることになりましたが、まだ自身でも実験は進めています。PIから直々に実験指導・研究指導が受けられるというのは手厚い指導を受けたい学生にとって良いことだと思います。加えて、櫻井武教授とのジョイントラボになりますので、ラボセミナーは大勢のメンバーと研究ディスカッションができますし、実験設備を自由に使わせてもらえるところも大きなメリットです。誕生日会やハロウィンパーティなどラボのイベントも多く、楽しいラボ生活が送れます。

最近ハマっているものは?


2018年に出産してから趣味と言えるものがまったくなくなってしまいました。。。正直、育児と仕事で1日が終わっていきます。しいて言えば娘の成長を見守ることにハマっています。あとは学生さんが娘の誕生日プレゼントにくれたレゴでいろいろ作るのが楽しいです。