2026.03.12

受容体の活性化サイクルの網羅的可視化 ―時間分解構造解析により明らかになったGPCRのGタンパク質選択性と2つのGタンパク質活性化経路―

私たちの体は、外から来るさまざまな合図を「受容体」で受け取り、細胞の中に伝えて働きを変えています。GPCR はその代表で、におい・視覚・心拍・血圧・痛み・精神機能など幅広い生命現象に関わります。そのため、医療現場で使われる薬の多くが GPCR を標的にしています。GPCR が合図を受け取ったとき、細胞内で最初に動き出すのが G タンパク質です。G タンパク質は GDP を結合してると休眠状態(OFF)で、GPCR に触れると GDP が外れ、代わりに GTP が結合して作動状態(ON)になります。作動した G タンパク質は受容体から離れ、次の反応を進め、やがて GTP を分解して元に戻ります。つまり、GDP と GTP の“入れ替え”が、情報伝達の出発点です。

しかし、この活性化サイクルは非常に速く、途中の状態は不安定です。近年、cryo-EM により GPCR と G タンパク質複合体構造が多数明らかになってきましたが、多くはヌクレオチド(GDP/GTP)が外れた状態を中心とした反応の一場面のみに限られていました。そのため、GDP/GTP がどの順番で結合し、どの瞬間に受容体から離れるのかといった “動きの順序”を網羅的に追うことは、GPCR の生物学的な理解、ひいては GPCR に対する創薬戦略への課題として残されたままでした。また NTSR1 では、「典型(C)状態」に加え、「非典型(NC)状態」が報告されていたものの、実際に細胞内で働くのか、どんな役割をもつのかは不明でした。

さらに、GPCR がどの種類の G タンパク質を動かすかによって、同じ薬でも「治療効果」と「望ましくない作用」が分かれることがあります。たとえば痒みを抑える一方で眠気が出る、といった現象は、GPCR が活性化する G タンパク質の種類により切り替わります。したがって、副作用のない薬剤を開発する上で、スイッチが入る瞬間から切れる瞬間までの“反応の動画”を手に入れ、GPCR がそれぞれの G タンパク質を切り分けて活性化する仕組みを包括的に理解することは非常に強力な武器となります。

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