2025.03.20

性行動中の各行動成分の遷移をつかさどる神経基盤を特定

 オスマウスにおいて、性行動中に順序だって現れる各行動成分を制御する神経基盤を解明しました。側坐核内の腹側シェル領域に投射するドパミン神経にアセチルコリン神経が作用して、各行動の表出が制御されており、アセチルコリン神経を性行動中に刺激すると、射精が誘発されることが分かりました。

 オスマウスは、発情メスに対峙してから射精に至るまでの性行動中に、匂い嗅ぎ、マウント(後ろから覆い被さる)、イントロミッション(挿入・腰振り)、そして射精と、さまざまな行動を順序だって表出します。これは繁殖の成功に重要であると考えられますが、一連の行動をつかさどる脳部位は特定されていませんでした。
 本研究では、脳内報酬系のシグナル分子であるドパミンが、行動遷移制御に重要な役割を担うことを明らかにしました。ファイバーフォトメトリー法により、ドパミンの強い入力を受けることが知られる側坐核へのドパミン入力パターンを網羅的に計測したところ、側坐核の特定の部位(腹側シェル:vsNAc)でのドパミン入力が、行動遷移と対応することが明らかとなりました。オスマウスの動きに対応した、イントロミッション中のvsNAcへのリズミックなドパミン入力は、vsNAcのアセチルコリン神経の入力により制御されることも分かりました。
 さらに射精前の最後のイントロミッションは、それ以前とは異なるドパミン入力を示すことも分かりました。アセチルコリン神経をイントロミッション中に人為的に興奮させると、最後のイントロミッション時に観察される特徴的なドパミン入力が誘発され、射精を引き起こしました。
 これらの知見は、側坐核内に性行動制御に特化した役割をもつ領域があり、射精の惹起に重要な役割を担う脳領域があることを世界で初めて報告するものです。うつ病などの精神疾患や、向精神薬の副作用の一つに射精障害があり、その治療への応用が期待されます。

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