2025.03.13

マルチタスク運動は女性高齢者の「客観的な睡眠の質」を向上させる

 頭を使う認知活動と体を使う身体活動を組み合わせた、いわゆるマルチタスク運動は、女性高齢者に対して、運動後の前頭前野の活性化を介して睡眠の質を改善させることを見いだしました。この知見は、高齢者の睡眠改善を目的とした運動プログラムの開発に資すると考えられます。

 深い睡眠中には脳波の振幅が大きくなり、客観的な睡眠の質を定量的に表す指標となる「δ(デルタ)パワー」が観察され、深い睡眠ほどデルタパワーの出現量が増加します。デルタパワーは、日中に体を動かすことや、頭を使う認知活動によって増加することが知られています。従って、身体活動と認知活動を組み合わせた、いわゆるマルチタスク運動が睡眠改善に更なる効果をもたらすと期待されます。一方、加齢とともに睡眠中のデルタパワーの出現量が減少すること、また、睡眠の質は、ホルモンの変化、特に性別によって影響を受けやすいことから、本研究では、女性高齢者を対象に、マルチタスク運動が睡眠の質に及ぼす効果を検討しました。
 つくば市在住の健康な女性高齢者15名について、運動条件として、低強度の①単調な運動、②マルチタスク運動、中高強度の③単調な運動、④マルチタスク運動、そして比較対象としての⑤安静座位、の5つを設定して、それぞれを実施しました。各運動の前後で、脳(前頭前野)の活性度を計測するとともに、睡眠ポリグラフ検査を用いて睡眠段階とデルタパワーの出現量を評価した結果、低強度のマルチタスク運動を行うと、運動直後に前頭前野が活性化し、また、夜間の睡眠中のデルタパワーが増加することが分かりました。
以上のことから、低強度のマルチタスク運動は、高齢者の良好な睡眠獲得のための有効な運動形態であり、新たな運動プログラムの開発に資すると考えられます。

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