2025.01.20
新奇個体との社会性行動を調節する神経メカニズムを特定
マウスにおいて、新奇個体との社会的な相互作用を形成するために不可欠なニューロンを同定しました。このニューロンは扁桃体中心核に存在し、NPBWR1という受容体を発現していました。さらに、ヒトNPBWR1遺伝子の遺伝的多型が新奇個体との社会性行動を変化させることを明らかにしました。
他者との新たな社会的相互関係の確立は社会性を持つ動物にとって重要であり、その背景には慣れ親しんだ相手よりも新奇な他者との接触を好む傾向(社会的新奇嗜好性)があることが考えられます。この性質は、社会的な交流を広げるために必要ですが、一方、新奇の他個体との接触にはリスクもあります。そのバランスをコントロールする基盤となる分子および神経メカニズムについては十分に解明されていません。
本研究では、マウスにおいて、扁桃体中心核のNPBWR1ニューロンの活性化が、新奇個体との社会的な相互作用を形成するために不可欠であることを示すとともに、慢性的な社会的敗北ストレス(縄張り本能により劣位のマウスに与えられる精神的ストレス)によって低下した新奇個体に対する社会行動を回復させることが分かりました。
さらに、ヒトNPBWR1遺伝子をマウスのNPBWR1ニューロンで過剰発現させたところ、新奇マウスとの接触時に見られるNPBWR1ニューロンの活動の上昇がなくなり、新奇マウスに対する社会性が障害されました。一方で、この効果は、一塩基多型(SNP)を持つヒトNPBWR1遺伝子を発現させた場合では観察されませんでした。
これらの知見は、NPBWR1ニューロンが社会的新奇嗜好性を制御することを示し、ヒトNPBWR1遺伝子の遺伝的多型が社会性に関わる性格傾向に関与することを示唆します。さらに、うつ病や自閉症患者に見られる社会性障害の治療を目的とした、ヒトNPBWR1を標的とする創薬研究への応用が期待されます。
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