2018.05.24
捕食者の匂いを感知し、本能的な恐怖を惹起する新たな匂いセンサーの発見 ~なぜ、マウスは捕食者の匂いを「学習」する必要がないのか~
Qinghua Liu教授および柳沢正史機構長/教授らが率いる国際的な研究グループは、フォワード・ジェネティクスにより、捕食者の匂いに対する恐怖行動が減弱したマウス家系Fearlessを発見し、その原因遺伝子変異がTrpa1遺伝子にあることを見つけ、さらにはその神経基盤を明らかにしました。
本能的な恐怖は、動物が危険を回避しその身を守るために必要不可欠な情動ですが、そのメカニズムは全くわかっていませんでした。しかし今回の研究から、体性感覚系の神経である三叉神経節のTRPA1タンパク質を発現している神経細胞が捕食者の匂いに対するセンサーとして働き、恐怖行動を引き起こしていることが明らかになりました。捕食者の匂いによる恐怖行動の誘発は嗅覚系を介していると考えられていたこれまでの概念を覆す発見です。
また、本研究で用いられたフォワード・ジェネティクスという手法は、従来、ヒトの生理や病気のメカニズムを明らかにするために有効なアプローチです。今回はマウスにおいて、捕食者による匂いに対して本能的な恐怖行動を引き起こす分子メカニズムについて明らかにしたことから、その他の本能的な行動を解き明かす上でも有効な戦略であると考えられます。
本研究の成果は、日本時間5月23日に Nature Communications 誌オンライン版で先行公開されました。
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