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IIIS Symposium

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コア研究グループ

柳沢 正史 / 船戸 弘正 研究室

睡眠・覚醒というブラックボックスをこじ開けるため、柳沢/船戸グループではフォワード・ジェネティックスを用いた野心的なプロジェクトが進行しています。これまでにランダムに突然変異を生じたマウスを5000匹以上スクリーニングし、遺伝性に睡眠異常を示す10程度の家系を確立してきました。睡眠異常の原因遺伝子は、染色体マッピングや次世代DNAシーケンスによって間もなく同定できるはずです。同定された遺伝子から、睡眠制御のパスウェイが解明されるでしょう。他にも様々な研究プロジェクトが動いていますが、特に力を注いでいるのが、オレキシン受容体に対する低分子量アゴニストの開発です。この化合物は、実験動物の睡眠覚醒研究に不可欠なツールとなるだけでなく、ナルコレプシーなど過眠症状を呈する疾患への、病態生理に基づいた本質的な新薬候補となります。

櫻井 武 研究室

桜井武教授は睡眠覚醒制御に関与する神経ペプチド(オレキシン)の発見者の一人で、オレキシン発見の報告(Sakurai, et al. Cell 1998)は2013年5月現在の被引用回数が3000を超えました。この他にもの神経ペプチドの機能解明や摂食行動、サーカディアンリズムをはじめとした脳や感情、情動、行動の研究にも取り組んでいます。現在、主に扱っているテーマは、1.睡眠覚醒制御メカニズムの探求、2.ナルコレプシーの1種であるカタプレキシー(覚醒時にも関わらず感情の高ぶりをきっかけに起こる筋脱力発作)発作のメカニズムの探求、の2つになります。この他にもマウスの行動学やin vivo脳内多チャンネル記録など、他の研究室と共同研究を行っています。

裏出 良博 研究室

裏出グループは内因性睡眠物質(プロスタグランジンD2、アデノシン)を用いて、睡眠覚醒の情報伝達系を追跡し、腹外側視床下部や側坐核殻部にある睡眠中枢を同定して、これらの睡眠中枢と様々なモノアミン系覚醒中枢との神経回路の連絡を明らかにしてきました。そのために様々な遺伝子改変実験動物の脳波と筋電位を非拘束状態で測定し、必要に応じて脳室内への薬液投与や特定の神経核の刺激や神経活動の記録が行えるシステムを開発しました。このシステムと最新の遺伝子改変や神経科学の技術を組み合わせて、睡眠覚醒調節の全体像を明らかにします。さらに、その研究成果を私たちの日々の睡眠の改善に繋げ、国民生活の向上に寄与したいと思います。

Robert Greene 研究室

徐波睡眠中(SWS)の徐波成分(SWA)は 覚醒時間に比例して増加し、睡眠時間中に減少します。この現象は現在入手可能な睡眠デマンド指標のうち、最も信頼性のある指標です。しかしながら、ローカルな実行系回路がどのようになっているのか、さらにどのような細胞活動により引き起こされているのかといった点については、全く未知のままです。また、徐波睡眠中の興奮状態は、覚醒時の細胞膜電位の安定化した興奮状態と電気生理学的に同様であり、徐波活動は不安定な興奮状態を反映していると仮定されていますが、詳細については検証されてきていません。Greeneグループでは、皮質および錐体細胞と、覚醒時および徐波睡眠中の非麻酔下のマウスから得られた介在神経におけるin vivo全細胞パッチクランプによる測定だけでなく、さらに局所的な測定や、介在神経の形態学的検討および光化学的制御を試みていく予定です。これらのアプローチにより、徐波活動に関与するローカルネットワークおよび細胞活動の解明を目指します。

Qinghua Liu 研究室

睡眠は、ほ乳類の脳が正常に機能し生存していくために欠かすことができないものです。しかしながら、現代生物学において睡眠覚醒制御の分子機構は謎に包まれたままです。Liuグループでは、生化学・遺伝学的手法を用いてマウスの睡眠/覚醒制御において鍵となる遺伝子の同定を目指しています。具体的には、1)最高水準の質量分析計(SILACなど)を用いた野生型と睡眠異常を示したマウス脳のプロテオーム解析; 2)睡眠/覚醒制御の機能解明を目的とした候補遺伝子の時期特異的および部位(脳)特異的なノックダウン(またはノックアウト)新規技術の開発;3)睡眠促進分子同定のための天然・合成分子のin vivoスクリーニングなどのアプローチにより、睡眠/覚醒の新規メカニズムを解明し、新規睡眠医科学分野を開拓していきたいと考えています。

長瀬 博 研究室

長瀬グループはオレキシン受容体作動薬の設計・合成を目的に研究を行っています。すでに、オレキシン2受容体に世界で最も選択性の高い作動薬、YN-1055(ED50= 20nM )の創出に成功しています。今後は、さらに活性、選択性の向上と同時に、オレキシン1受容体選択的作動薬、オレキシン1,2受容体の両方に結合する作動薬の創出も目指すと同時に経口投与可能で血液脳関門透過性が高く、代謝、副作用、毒性の分離した作動薬を創出する予定です。また、我々はオピオイド受容体のκ選択的作動薬、ナルフラフィンを世界で初めて、難治性掻痒症治療薬として2009年に発売しました。この薬物は薬物依存性、嫌悪性の分離に成功した唯一のオピオイド系薬物ですが、鎮静作用が強く、術後疼痛の治療薬としての開発が困難でした。この薬理プロファイルを改善し、がん性疼痛治療薬としての開発も行っていきます。

坂口 昌徳 研究室

坂口准教授は2001年に本学医学専門学群を卒業し、その後、慶應大学、カナダ小児病院、理研脳センターにおいて、再生医学、成体脳における神経の新生、記憶などの分野で研究を続けてきました。その間、最先端の研究技術(光遺伝学、神経トレーシング、行動神経科学など)を習得しました。留学をきっかけに、より広い視野で物事を判断し、様々な文化圏の人々とコミュニケーションをとる能力(中国語、フランス語など)を高めることに興味を持ち、それは現在の研究生活にも大いに役立っています。現在、坂口グループでは、睡眠と記憶を中心とした研究を行っています。桜井武教授との共同研究関係の下、記憶の固定化における睡眠の機能の解明、睡眠・覚醒の推移に関与する神経ネットワークの解明、ナルコレプシーという睡眠障害の症状の一つであるカタプレキシー発作のメカニズムの解明に取り組んでいます。

Michael Lazarus 研究室

Lazarusグループではアデノシンによる睡眠覚醒調節機能に注目しています。アデノシンの受容体(A2A 受容体)は、大脳基底核の線条体 淡蒼球系の神経にドーパミンD2受容体とともに強く発現し、運動機能・習慣形成・嗜癖行動などに関与しています。Lazarus准教授らは最近、コーヒー などにも含まれるカフェインが大脳基底核の一部分である側坐核の A2A 受容体をブロックし、覚醒を引き起こすことを見出しました。これは すなわち側坐核が睡眠覚醒調節に重要であり、さらにモチベーションが睡眠覚醒を左右する可能性を示唆しています。大脳基底核 の睡眠覚醒調節における重要性を明らかにすることを目指し、研究を進めています(Lazarus et al., Trends Neurosci, doi: 10.1016/j.tins. 2012.07.001)。

林 悠 研究室

私たちの睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠からなる複雑な生理状態です。レム睡眠は夢を生じ、一方、ノンレム睡眠は徐波と呼ばれる特徴的な脳活動を伴います。レム睡眠やノンレム睡眠の生理的役割や進化的起源は生物学上の大きな謎です。林悠グループはこうした謎を解くために、マウスを用いて、レム睡眠とノンレム睡眠を生み出す脳部位の同定・解析と操作を行います。また、レム睡眠やノンレム睡眠は一部の脊椎動物に固有の現象ですが、睡眠そのものは広くみられる現象です。そこで我々は、「眠気」の分子実体を明らかにするために、非常に単純なモデル動物である線虫C. elegansを用いた研究も同時に進めていきます。

学内連携グループ

松崎 一葉 研究室

宇宙医学と産業精神医学を専門とし、行政、民間企業や研究機関における労働衛生対策および、睡眠を含めた労働者のメンタルヘルス対策に関するデータの収集、解析を行っています。これら科学的根拠にもとづいた結果から施策を立案し、健康増進活動等を通して成果を還元してきました。また宇宙医学の分野で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)主任研究員 として、日本人宇宙飛行士の選抜・訓練、ISS滞在中の精神心理支援手法をNASA・ESA・RSAなどの各国宇宙開発機関と連携して確立し実施してきました。これらの実績は、実践の知識と科学的な確証に基づいた知識を融合させ、マクロな視点から「一次予防から三次予防までの包括的メンタル支援システム」として確立され、政策立案に資すために現場での実践的対応の個別事例対応のデータベースを、労務管理責任者・医師・コメディカル向けに構築しています。

島野 仁 研究室

島野教授は脂肪酸合成転写因子SREBP-1やTFE3など栄養転写因子の研究を通じて、エネルギー代謝制御における転写因子間のクロストークネットワーク機構を確立し、インスリン抵抗性等様々な生活習慣病病態との関連を示してきました。現在、空腹制御転写因子CREBHの解析や絶食摂食すなわちin vivoにおけるエネルギー状態の感知システムの解明をめざしています。また脂肪酸延長酵素Elovl6を介した組織脂肪酸組成制御の生理病態意義、メカニズムの解明に挑んでいます。Elovl6KOマウスでは、肥満の改善を必要としない生活習慣病 :インシュリン抵抗性、糖尿病、動脈硬化症及びNASHの新しい治療戦略となります。さらに組織脂肪酸の質的制御という概念は、代謝疾患にとどまらず、炎症、脳機能、 精神機能、ガン、睡眠など広範な生物現象を理解する一助となると期待されます。

林 純一 / 中田 和人 研究室

林 純一教授は,細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアに存在するミトコンドリアDNA(mtDNA)の生理機能を20年以上研究し、細胞間でmtDNA分子を自在に交換する方法を駆使して、ミトコンドリア病の患者の細胞に散見される突然変異型mtDNA分子が、ミトコンドリア機能不全を引き起こすことを示しました。さらに、林教授は特定の突然変異を有するmtDNAがかん転移や糖尿病の発症することも明らかにしています。最近では、突然変異型mtDNA分子またはそれに由来する遺伝産物が先天的免疫システムによってモニターされるという驚くべき可能性を提唱するに至っています。エネルギー代謝と睡眠覚醒との関係はまだ謎に包まれています。

深水 昭吉 研究室

生体の恒常性は、外界、環境から受ける刺激に対する化学的な反応により制御されている。細胞膜を通過する多くの信号は核内へ集約され、修飾酵素によりヒストンと転写因子がリン酸化、アセチル化、ユビキチン化、メチル化されます。深水グループでは、生活習慣病や妊娠関連疾患、寿命に関する分子機構解明を目的とし、マウスや線虫等のモデル生物を用い遺伝学的技術を駆使して栄養やストレスがどのように後成的(エピジェネティック)メカニズムを制御しているか解き明かそうと活動しています。妊娠は、多臓器の調和した適応が必要な生理学的なプロセスであり、母体と胎児の恒常性を維持するため、エネルギーのバランス、浸透圧調節、炭水化物やアミノ酸、脂肪、栄養塩類、ビタミン等の代謝を劇的に変化させています。妊娠期間中の恒常性不全は、深刻な障害を引き起こす可能性があります。深水教授らは、それら高血圧などの妊娠中の合併症についても研究しています。

高橋 智 研究室

高橋教授は、これまで一貫して病変組織や組織構築がどのような遺伝子の発現や機能変化によって形成されるかの解明を目的として研究活動を行ってきました。より原因遺伝子と表現型としての形態変化の関係を明らかにしたいと考え、遺伝改変マウスの作製を研究に導入しました。特に、造血系に発現するGATA転写因子群の様々な遺伝子改変マウスを作製し、GATA-1が赤血球、巨核球、好酸球、マスト細胞の分化に必須の転写因子であること、その発現制御には複数の調節領域が必要であることを、塩基配列レベルで明らかにしました。その後これまであまり研究の行われていなかったlarge Maf転写因子群の研究を開始し、large Maf転写因子群は、日本で同定された転写因子群ですが、その個体における機能や疾患との関連は明らかにされていなかったため、ヒトおよびマウスで4種類存在するlarge Maf転写因子群の遺伝子改変マウスを作製し、幾つかのヒト疾患と密接に関与していることを明らかにしました。

サテライト

清水 徹男 / 神林 崇 研究室(秋田大学 医学部神経運動器学講座精神科学分野)

秋田大学の精神科の清水教授及び神林崇准教授は、過眠症を来すナルコレプシーなどの睡眠障害を研究する国際的機関のひとつであり、各国の過眠症を患う1000人以上の脳脊髄液を分析し、オレキシン、MCH、QRFP等ペプチド類を測定してきています。いくつかの研究機関とも連携し、髄液ヒスタミンや自己免疫性の抗アクアポリン4抗体(anti-AQP4-Ab)、抗NMDA受容体抗体(anti-NMDAR-Ab)を定量・評価しています。清水教授らは、髄液オレキシンはナルコレプシーの病態マーカーとして、ヒスタミンを過眠症の状態マーカーとして提案しています。最近、症候性ナルコレプシーの患者のうち、 anti-AQP4-Abが陽性であり、髄液オレキシン低値を呈する症例が散見されることを発見しました。この所見は、症候性ナルコレプシーの一部が自己免疫過程によって引き起こされたことを初めて示しています。

Carla Green Lab(テキサス大学 サウスウェスタンメディカルセンター)

Greenグループでは、これまで概日機構に焦点を当てた研究を行い、アフリカツメガエルでの新規リズム遺伝子Nocturninを含め、いくつかの概日制御遺伝子の同定に成功してきました。さらに、網膜の概日機能の分子機構解明を行い、遺伝子組換えアフリカツメガエルにおいて分子生物学的に概日機能を錯乱させる技術を確立しました。また、Nocturnin遺伝子がmRNAからpolyA末端を除くpolyA特異的ヌクレアーゼ、脱アデニル化酵素をコードしていることを明らかとしました。近年では、ほ乳類モデルシステムに注目し、代謝調節の概日制御におけるNocturninの役割解明を目指し、研究を行っています。さらには、中枢概日機構におけるクリプトクロームタンパク質の役割にも興味を持ち、概日機構の転写後制御機構解明の研究も行っています。

Joe Takahashi Lab (テキサス大学 サウスウェスタンメディカルセンター)

Takahashiグループでは、マウスにおける行動制御遺伝子探索にフォワード・ジェネティックスを用いるという先駆的な研究を行ってきました。我々が得た成果は、神経科学、遺伝学、および分子生物学分野において多大なインパクトを与えたと言えます。表現型から変異遺伝子を探索するというストラテジーを用いて、マウスにおいて最初の概日リズム変異体(Clock)を得ることに成功しました。さらに遺伝子改変レスキュー法とポジショナルクローニングを組み合わせることにより、Clock遺伝子を同定し、本遺伝子がベーシックヘリックスループヘリックスPASファミリー新規転写因子であることを明らかとしました。Clock遺伝子のクローニングにより、ほ乳類の概日機構の重要な分子機構が明らかとなり、転写に基づくフィードバック機構の基礎が確立されたと言えます。その他重要な9つの概日遺伝子候補を含めた概日経路の発見によって概日時計機構は動物間で広く保存されているということが明らかとなりました。近年では、CLOCK:BMAL1BHLH-PAS転写活性複合体の結晶構造を解明することに成功し、さらにゲノム上に重要な概日転写調節因子のゲノムターゲットを同定しています。

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